近居とは
「近居」とは、親世帯と子世帯が同じ家に暮らす「二世帯(多世帯)住宅」に対して、それぞれの世帯が日常的に往来ができる距離にある、別々の住宅に暮らすことを指します。
2015年に決定した「少子化社会対策大網」では、三世代同居・近居を促進することについて言及されています。
近居は、「スープの冷めない距離」と言われることがありますが、実際のところは具体的な定義はありません。
「移動手段は徒歩・車・電車かを問わず、10~30分以内で向かえる距離」が理想という説もある一方で、車・電車で1時間以内の場所に近居する家庭もあります。
近居をする際には、お互いの価値観を考慮して、各ご家庭が無理なく快適に生活できる場所に住むことが大切です。
半数以上の方が「近居」を理想と考えている
近居は、同居よりも家庭内トラブルが少なく、満足度が高いです。
理由は説明しなくてもきっとご想像できることでしょう。
同じ家に住んでいるわけではありませんから、気づまりすることがなく、いざ困ったことがあったら互いに助け合えるという点で、近居が理想的と考える方は多いようです。
用事を済ませたらすぐに自宅に帰れるよう、同じマンションの別階や別棟に住むスタイルを選ぶ家庭も増加しています。
近居のメリット
安心感がある
近居の良さは、やはり何かあったらすぐに駆け付けることができるという安心感があることでしょう。
ときどき介護が必要なときや、一時的に体調が優れないときなど、近くに家族がいるだけで心強いものですね。
子世帯が共働きしやすい
夫婦共働きが一般的になってきた今、二世帯同居では生活時間の差があり、早朝や深夜にお互いに気を遣ってしまうことになりますが、近居であればこのような心配はほとんどありません。
また、夫婦共に帰宅時間が遅くなってしまうとき、親世帯に子供の面倒を見てもらうことができます。
記念日に三世代が集まりやすい
普段は会う機会が少なくても、誕生日やお正月は家族で集合したいもの。
近居している親世帯が孫のお祝いに来てくれたり、子世帯が正月やお盆に挨拶に行ったりと、大事なイベントに集まりやすいですね。
行き来の際、渋滞に長時間巻きこまれてしまうということもなくなります。
住宅の資産活用の柔軟性がある
親世帯が亡くなり、実家の片付けをしなくてはならないとき、遠く離れた地域に住んでいると、作業や地元の役所での手続きなどで心身共に疲労が蓄積したという経験をされた方は、たくさんいます。
かと言って二世帯住宅では、やはりどちらか一方の世帯の方が亡くなったとき、人間関係や経済の状況によっては住み続けられなくなるケースもあり得ます。
しかし近居であれば、片方の家が空いたときに売却しやすく、あるいは賃貸住宅として活用するという選択肢もあります。
また、お子さんが独立したときの住居として使うなど、生活環境に合わせて、柔軟に資産活用することが可能です。
老後資金を確保するため、田舎の持ち家を売り払って、近居生活を始めるご家庭もあるようです。
近居の助成金制度がある
出産・育児への不安を軽減し、介護しやすい環境づくりができるという観点から、三世代(親・子・孫)の近居・同居に対する支援制度が国や自治体で積極的に実施されています。
リフォームや引っ越しにかかる費用を補助対象とするのが一般的ですが、補助要件や金額は地域によって異なるため、お住まいになる予定の自治体に確認してみると良いでしょう。
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近居する住宅の工夫の仕方
近居をするにあたり、親世帯と子世帯が集まるときにも使いやすいよう、中古物件をリフォーム・リノベーションする人も増えてきています。
また、将来的には同居や住み継ぎを考えて、住宅選びをするご家族もいます。
介護や子育ての手伝いをするにあたり、以下のようなリフォームを行っておくと安心です。
大きめのユニットバス
大きめのユニットバスは、複数人で入浴するときに便利です。
浴槽内にステップがあれば、幼いお子さんや高齢の方が腰かけとして使えるため、一緒にお風呂に入るときも安全です。
また洗い場も広くしておくと、介護が必要な方のバスタイムがより快適になります。
>> ライフスタイルにあわせて選ぶ!浴槽のかたち・素材の種類知っていますか?
充実した収納
将来同居する可能性がある住宅であれば、収納容量を確保しておくことも重要です。
鯉のぼりなどの季節の行事に使うもの、子が親から受け継ぐ着物など、2世代、3世代に渡って保存していきたい物は増えていくもの。
また、複数世帯が同居することになった際、収納場所がないというトラブルは多いので、クローゼットや靴箱をどのように使い分けるかも決めておくと良いでしょう。
広いリビング・ダイニング
家族が集まるときに一番使うのは、リビング・ダイニングです。
誕生日会や年末年始などに全員がくつろげるよう、ゆとりのあるリビング・ダイニングがあるとベストです。
料理や食器を運びやすいよう、キッチンからの動線もキープしておくことを忘れずに。
低い位置にある照明スイッチ
照明のスイッチは、小さなお子さんや腰が不自由になってきた高齢の方でも簡単に手が届く位置に設置しておきましょう。
床から110cm位の場所であれば、身長に関わらず誰もが使いやすいでしょう。
引き戸
バリアフリー住宅で推進されている引き戸は、手荷物が多くても力を入れなくても開閉できるので、どの世代の方でも使いやすいのが特長です。
玄関や浴室・トイレの扉は、できれば引き戸にリフォームしておくことをおすすめします。
腰かけのある玄関
足腰に負担がかかりやすい方は、歩き始める年頃のお子さんがいるとき、玄関に腰かけがあると靴の着脱が楽になります。
スライドベンチ付きのシューズボックスなら、使うときだけ引き出せて、普段は収納しておけるので使いやすいでしょう。
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近居のトラブルとその対策
同居のようなストレスがなく、ほど良い距離で家族が付き合っていけるイメージのある近居ですが、近くに住んでいるからこそ起きてしまうトラブルもあります。
以下にご紹介する、実際にあった近居のトラブルの原因をよく理解し、皆が気持ち良く暮らしていくための対策もしっかり考えておきましょう。
毎週末、早朝に親に起こされる
平日は毎日のように終電近い時間に帰宅している子世帯のご夫婦。
休日は遅くまで寝ていたかったのに、合鍵を利用して起こしに来るため、ゆっくり休めなくなってしまったという例があります。
さらには、薄着姿で寝ていた嫁を、義父に見られたというケースも。
実は、近居においては過干渉による失敗例が一番多いのです。
合鍵があるからと言って、勝手に入らないなどのルールを事前に決めておくことは、近居する上で最も重要になります。
買い物の度に送り迎えすることになった
近所のショッピングモールで、それぞれの買い物中にばったり遭遇したご家族。
子世帯は車で来ていましたが、親世帯はバスを使って出かけていました。
その日は親世帯の荷物が多かったので、子世帯が親切心で車で送ってみたら、その後も買い物の度になぜか送り迎えをすることに。
それぞれ住む家が違うため、外出時に直行直帰することができなくなり、同居するよりもかえって手間になってしまいました。
一度引き受けてしまうと、後から断りづらくなってしまうものです。
親世帯が甘えがちな性格かどうかも、事前に考慮しておくことが賢明と言えるでしょう。
子世帯が実家で使っていた物の置き場で揉めた
子供のときに使っていた物を、どちらの家に置くかで揉めたというパターンもあります。
とりあえず実家である親世帯の家に置きっぱなしにしていたところ、新しく子供部屋を作ろうと思っていたスペースに勝手に持ち込まれてしまいました。
自分の部屋ができることを楽しみにしていた孫が抗議しても、祖父母は耳を傾けてくれず、きれいに掃除したばかりの部屋に、ホコリだらけの荷物を置いて帰っていってしまい、また一から片付けるハメに。
引っ越しをする前に、物の整理や置き場についての話し合いを納得がいくまでしておくことが肝心です。
親世帯を説得するのが大変
近居をする際、どちらか一方の世帯だけが引っ越すという例は多いです。
たいていの場合は、現役で働いている子世帯が生活場所を変えるのは難しいため、親世帯が引っ越すことになります。
しかし親世帯に引っ越しを頼んでも、良い顔をしてくれなかったというケースは、よくあります。
特に、高齢の方や地元を愛する方は、未知の土地や暮らし方が変化することに対して嫌悪感を抱いてしまう傾向があります。
引っ越しのポイントになるのは、タイミングです。
孫の入学に合わせるとスムーズに進められる可能性が高いでしょう。
また、子世帯の会社の場所の都合など、納得してもらえる要素がないと説得が難しい場合もあるので、お互いの理想の暮らし方をよくすり合わせていきましょう。
なお、都会の生活に慣れた人が地方へ引っ越す場合もストレスを溜め込んでしまう例が多いので、家族全員が賛成できない場合には、無理に同居・近居はしない方が健康的かもしれません。
相互に協力し合って、見守り続けたい家族。ですが、常に一緒にいることが望ましいとは限りませんよね。
住宅は、誰もが本当にリラックスできる場所にしたいものです。
長く住みやすい最適な環境はどのような形であるのか、なるべく時間をかけて、家族でじっくり話し合ってみてくださいね。
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