話題の整理収納アドバイザーが伝えたい、本当に快適な空間を作るためのポイント

更新日:2024年10月21日

能登屋英里様プロフィール

「整理収納アドバイザー」「住宅収納スペシャリスト」として今話題の、能登屋英里(のとやえいり)さん。住宅の整理収納のアドバイスや、家具の提案などを幅広く手掛けるほか、雑誌の連載・記事監修など、数多くのメディアでも活躍されています。今回は、能登屋さんに「整理収納」でありがちな悩みや、上手に整理収納するための鉄則、リフォーム・リノベーションの際のチェックポイントなどついて取材しました!

この記事で取材した人:能登屋 英里(のとや えいり)

【資格】ビジュアルコンサルタント、整理収納アドバイザー1級、住宅収納スペシャリスト

【プロフィール・経歴】自らがデザインを手がけ、リノベーションした築50年のマンション(52㎡)在住。夫、6歳の娘との3人暮らし。
15年間のアパレルディスプレイ経験を活かした、見せる収納が得意。個人宅・オフィス等のインテリアや整理収納のアドバイスを行う傍ら、自身のInstagram( @eiriyyy_interior)で収納や暮らしについて発信中。
自宅のインテリアを取り上げたメディア掲載は70回以上。雑誌の「収納のBefore→After」企画の監修なども行っている。

HP : https://eirinotoya.com
Instagram:@eiriyyy_interior

整理収納にありがちな悩み=「自分に適した方法が分からない」

Q:能登屋さんに整理収納の問い合わせをされるお客様からは、どのような相談が多いですか?

「どんな収納用品がいいのか分からない」
「モノの住所(定位置)の決め方が分からない」

といった、ご相談が多いです。

「こういう引き出しを買ったんだけど、使いこなせない」とか「作り込みすぎて、他の家族が使いにくくなった」とか。
自分に合った整理収納の方法が分からない方が多い印象です。

「モノの住所を決められない」方は、普段モノを置く位置を決めないまま、適当に置いちゃって。その「何となく置いている」のがそのまま風景になって。そして新たに買ったモノも「とりあえず、ここに」と住所を決めずに置いてしまう。その繰り返しの結果、よく分からない棚ができあがってしまう。

リビングはキレイだけど「引き出しの中がグチャグチャ」とか「お客様が入らない部屋に全部押し込んでいたら、物置部屋になってしまった」といったケースもありますね。
それから「お買い物が好きで、まとめ買い・定期便の利用が多く、どんどんモノが来て、その置き場に困っている」という方など。

私に依頼してくださるお客様は、本当に整理収納できない方というよりは「整理収納に対して苦手意識がある方」が多いと感じます。

整理収納の4工程、苦手分野の把握が肝心

Q:実際「整理収納がとても苦手」という方は多いと思います。上手に整理収納するためのコツやポイントはありますか?

「自分は何が苦手なのか」を認識すること。

整理収納を説明するピラミッドがあるのですが(※下図参照)、《掃除》《片付け》《収納》《整理》のどの工程が苦手なのかを分解して理解することが大切です。

整理収納ピラミッド

必要・不必要の区別をして、不必要なモノを取り除く《整理》が苦手なのか?

それとも「整理」は比較的得意だけど、今使っているモノを使いやすい状態にする《収納》が苦手なのか?

よく「片付けが苦手」という方がいるのですが《片付け=元の場所に戻すだけの行為》のことを指します。使ったペンを、元のペン立て(=ペンの住所)に、ただ戻す。それが《片付け》。

例えば、お子さんが遊び終えたパズルはおもちゃ箱へ、読み終わった絵本は本棚へ、と、どんどん元の場所に戻せるじゃないですか。
それは《整理》ができていて、かつ《収納》でモノをしまう場所(=住所)も決められている。だから、元々あった場所へ《片付け》られるんです。

お客様の悩みを聞いていると《整理》ができていないという方が一番多いです。
《整理》ができていない=「いらないモノ」と「いるモノ」が、同じ場所に入っている状態のこと。
書きやすいペンって、だいたい決まっていますよね。逆に、書きにくいペンは使われない。でも、どちらも同じペン立てに入っていると「今、使いたいペンは、どれ?」と探してしまう。
「期限が切れているモノと、切れていないモノ」が一緒に入っているのも、整理されていない状態です。

整理の土台から始めないと、必ず崩れてしまいます。《整理》ができてからの《収納》です。

毎日使うマグカップが取りにくい場所にあったり、ものすごくいい位置に普段あまり使わないモノがあったり。
このような場合は、《収納》ができていない状態と言えます。

「したい暮らし」からイメージする整理収納の鉄則と実践例

Q:整理収納のアドバイスは、具体的にどんなことをするのですか?

まず(整理収納を実践する前に)、お客様の「悩み」を伺います。
何に困っているか、どんな風にしたいか、アウトプットしていただきます。

現状と未来についてお話しして「どんな生活をしたいか」「その生活を実現できていない原因は何か」を掘り下げます。ここが大事。

そして収納や場所の採寸をしていただき「収納の用具が足りていない」などを把握していきます。

整理収納は、まず「いる/いらない」で分ける作業ができていないと「必要な収納用品が何か」が分からない。「どこに何が残るか」をイメージできていないと「そこに適したグッズ」を買えないんです。

整理収納の5つの鉄則

そもそも整理収納には、5つの鉄則があります(※下図参照)。

整理収納の5つの鉄則

その中でも、1つ目の「適正量を決める」をできていない方が多いです。
バスタオルなら、我が家の場合は3人家族で1枚ずつ使い、毎日洗濯するので、洗い替えで合わせて6枚だけ持っています。それが我が家の適正量です。

<整理収納の実践>

整理収納を実施する当日は、収納されているモノを全部出していただくことから始まります。
自分が持っている量や、買い物の傾向を認識していただきます。

収納されているモノを全部出す

次に整理を行う上で「使用頻度」を伺います。
「毎日/週2、3回/月に1回くらい」など使用頻度別に5つに分けて、付箋を貼ったり、番号を書いたりしながら、モノと向き合っていただくんです。

整理収納の5つの鉄則

使用頻度ごとに分別した後、収納の場所(=モノの住所)を決めます。
歯ブラシと歯磨き粉は、セットで置いておくものですよね。それと同じで「どこに、何と何があったら便利か」を、行動を考えながら決めていく。

基本的に整理収納する際は、お客様に参加していただきながら進めています。次にお客様が悩んだとき「そうか。これはここで使うから、ここに入れるといいんだ」と思い出していただくためにも大切なことだと思うから。

リフォーム・リノベーション前にチェックしたい!整理収納の計画の立て方

Q:よく「リフォームやリノベーションで収納物を入れ替えるときが、整理収納の絶好のチャンス!」と言いますが、どのように収納計画を立てるべきでしょうか?

「モノの量を把握する」のが一番大事。量を把握すれば、適した収納計画を立てられます。
リフォーム・リノベーションをする際には「持ち物チェックシート」をぜひ作っていただきたいです。キッチン・クローゼットなどゾーン毎に「何を何個持っているのか」を書き出してみましょう。例えば、本は何冊持っているのか、家電はどんな種類があるのか、衣装ケースはどんなサイズを何個持っているのか?そして、それらをどこに置くのかを間取りに書き込んでいきます。

以前「家を建てて満足していないポイントは何?」というアンケート調査をされた会社があったのですが、1位は「断熱」で、2位は「収納」だったんです。
リフォームやリノベーションのときも、収納計画をきちんとしないと、後悔することが増えてしまいます。

「本当に自分の持っている物が入るのか?」逆に「こんなに収納スペースは必要か?」など、収納量を考え、住所決めをしていくことが重要です。

本が1000冊あるのに、100冊分のスペースの収納しか作っていなかったら「あと900冊はどうするの?」となりますよね。
逆に、広過ぎる収納を作るのではなく、持っているモノに合わせた「最小限の収納」で済めば、スペースの無駄使いも防げて、さらにモノの住所を設定しやすくなります。

次に大切なのが「動線」
洗濯の際に「部屋干し」の頻度が高いなら、洗濯機の近くに部屋干し用の棒があって、その近辺に服を畳んで片付けられる場所があると便利。
「外干し」することが多いなら、洗濯機からベランダまでの動線が直線的にあるといいですよね。
「干す→取り込む→畳む→しまう→着替える」などの行動をイメージすることが大事です。

ご家族の構成や年齢によっても、適した収納は違ってきます。
お子さんが小学生なら「帰って来て手を洗う→カバンを置く→宿題をする」までの動線上に、ランドセルを置けたり掛けられたりする場所があるといいですよね。

ーーー上手に整理収納するためには「持っているモノを把握して、サイズを測って」など、結構手間を掛けなくてはいけない、ということですね?

そうですね、事前準備が9割。
ものすごく手間を掛けて計画に力を注ぐと、後の何十年がものすごく楽で快適になります。

よけいな収納を作ったせいでリビングが狭くなったら、嫌じゃないですか。
無駄が生まれない収納計画を立て、リビングを広く取って皆が快適に使える空間にしたほうが、気持ちいいですよね。

整理収納を見直した後に「キレイを保つ」コツ

Q:気合いを入れて整理収納できても、いつの間にかまたゴチャゴチャになってしまいます。キレイな状態を維持するためのポイントはありますか?

汚れが溜め込むと取れなくなるのと一緒で、整理収納も定期的に見直すのが大事ですね。

あと「まずは1ヶ所、そこだけはキレイに保つこと」を習慣化するんです。
長年身についた歩き方を簡単に変えられないのと同じで、整理収納の習慣もなかなか変えられないもの。だから、小さいところから習慣づけをしていきましょう。

ゴチャつきそうになったら、全部出して「これは、いる/いらない」と整理する癖をつけて、マインドをちょっとずつ変えていく。使いやすくなった心地よさを実感することで「ここを乱したくない」という気持ちになってくると思います。

モノを買う習慣も簡単には変えられないので、スペースが空いていると思って、また買い過ぎちゃう。でも、それだと「何で捨てた」「何でこの空間にしたか」という目的がズレてしまう。

先ほどお伝えした「何で、こういう風になりたいのか」「どういう暮らしをしたいのか」を軸にしてモノを減らしていくと、キレイをキープしていけるでしょう。

ダイエットを一気にやるとリバウンドしやすくなるのと同じで、整理収納も一気に気合いを入れてやり過ぎないほうがいいです。
全部やろうとすると、面倒くさがり屋の方や整理収納が苦手な方などは「どこから、何をやればいいのか」分からなくなってしまうので。

「ここだけはキレイに保とう」というスペースを、少しずつ広げていくといいと思います。

上手に整理収納すれば、さらに素敵な家・人生に変えられる

Q:最後に、能登屋さんにとって、整理収納とは?また「整理収納アドバイザー」のお仕事に、どんなやりがいを感じていますか?

おウチがどんどん変わっていく姿を見るのが、楽しいです。それがこの仕事のやりがい。

整理収納は「人生を変えられるもの」です。
抱えていたモヤモヤが、パン!と取れていくように、心が軽くなっていく方が多くて。「自分は、ここに悩んでいたんだ」と気づくのでしょうね。

「家って、すごくいいもんだよ」ということを、そして(ただ老朽化したから変えるだけではなく、)整えた後の楽な暮らし・心地よさを、ぜひ皆さんに知っていただきたいです。

次回のテーマについて

能登屋さんには、今後も住宅の整理収納について取材させていただきます。

次回テーマは『整理収納アドバイザーに聞いた「キッチン」整理収納術!Before/After実例も解説』
キッチンの整理収納で一番大切なポイントや、具体的な収納テクニック、キッチンのリフォームをする際の収納計画などについて、ご紹介します。

第1回: 話題の整理収納アドバイザーが伝えたい、本当に快適な空間を作るためのポイント(※本記事)

第2回: 整理収納アドバイザーに聞いた「キッチン」整理収納術!Before/After実例も解説

第3回: 整理収納アドバイザー直伝「リビング」整理収納のコツ!Before/Afterの事例もご紹介

第4回: 洗面所・浴室の整理収納のポイントは?人気の整理収納アドバイザーによる実例も交えて解説

第5回: 子どもが自分で片付けられるようになる?!プロ直伝の「子の成長に合わせた整理収納」の要点や実例を公開
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