洋瓦とは
洋瓦(洋式瓦)には、大きく分けると粘土瓦とセメント瓦の、2タイプがあります。
江戸時代末期には、フランス人により日本国内で製造されるようになっていました。
粘土瓦タイプの洋瓦は、その名の通り粘土をベースとして製造されます。
主にフランス式の「F形」とスペイン式の「S形」があり、また近年では流行している南欧風住宅を再現するため「混ぜ葺き仕様」の製品も販売されています。
一方、セメント瓦(モニエル瓦・乾式洋瓦)は、石灰岩を水と混合したセメントをベースにして作られます。
粘土瓦と見た目はよく似ていますが、粘土瓦の耐久性が40~50年以上であることに対し、セメント瓦は10~20年位の周期で塗り替えが必要で、かつ重量があるため地震に弱いというデメリットがあり、最近では生産数が減りつつあります。
今回は、粘土タイプの洋瓦で人気の3種類についてご紹介します。
F形瓦(平板)
現在、洋瓦において最も出荷量が多いのが、「F形瓦(平板)」です。
最も古くから採用されていた形状の一つで、凹凸が少なく平らなデザインで、フラットな形状であることからF形瓦・平板と呼ばれています。
商品によっては、少々凹凸が施してあるものや、波形のものもあります。
実際、完全に平らな形をした洋瓦は少なく、部分的に凹凸を作り、他のメーカーとデザインに差を出す傾向があります。
製造時の焼き上がりの寸法にバラつきが出ることがあり、横に葺いていく施工方法をとるので、下から見たときに縦の線が真っ直ぐになるように仕上げるのが難しい場合があります。
ただ比較的容易に施工できるので、工事を短期間で済ませたい方や、スッキリとした軽やかな見た目の屋根にしたいときにおすすめです。
S形瓦
「S形瓦」の呼び名は、スパニッシュ(スペイン)に由来します。
国産の洋瓦の中で、最も凹凸が明瞭で、立体感や高級感のある屋根に演出できます。
大正時代に西洋建築とともに伝わり、改良されたデザインであるため、洋風建築に適しています。
施工の難易度が高く、F形瓦と比べると工期も費用もかかりますが、最高級の屋根に仕上げたいときや、個性のある屋根にリフォームしたいときに最適です。
混ぜ葺き仕様
「混ぜ葺き仕様」は、F形やS形の洋瓦に、数種類の色を焼き付けて製造されます。
混ぜ葺きとは、屋根を一つのカラーで統一するのではなく、複数の色を混合して使い、屋根に表情を出したい場合にとる工法ですが、単調にも派手にもならないよう、カラーの比率を考えるのが難しいというデメリットがあります。
そこで、意図的に色ムラを焼き付けて作られているのが、混ぜ葺き仕様の洋瓦です。
数種類のカラーの洋瓦を混ぜて葺き替えるよりも失敗がなく簡単に、混ぜ葺きで施工した屋根のような見栄えにできます。
南欧風の屋根にしたいときには、混ぜ葺き仕様の洋瓦を検討してみると良いでしょう。
洋瓦の葺き替えリフォームの施工価格・費用
新しい洋瓦へ葺き替えるリフォーム費用は、1㎡あたり8,000~15,000円程度です。
一般的な戸建て住宅で葺き替える際の屋根の施工面積は約80~120㎡なので、全体の費用は64~180万円位と考えておくと良いでしょう。
ただし、新しく採用する瓦のグレードや、既存の屋根材の種類、屋根の勾配・形状によっても、設置費用や撤去費などが変動します。
足場代が別途かかることもあるため、最終的にかかる総額については必ずリフォーム会社に確認してみてくださいね。
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洋瓦のメンテナンス周期は基本10~20年
粘土タイプかセメントタイプかにかかわらず、洋瓦で起きる不具合としては、強風により棟瓦が外れてしまう、屋根の漆喰部分がはがれて内部の土が見えてきてしまう、といった事例が多いです。
中でも2001年に「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が確立される前に施工されたものは、地震や台風の影響を受けやすいです。
「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」とは、震度7の巨大地震にも耐えられる優れた施工基準のことですが、同ガイドラインが制定された後であっても、手抜き工事を行われてしまった場合は、やはり不具合が生じやすくなります。
ご自身で屋根の頂上部分の瓦が見えるようであれば、歪んでいる箇所や、割れている部分、欠けている部位がないか確認してみましょう。
少しでも瓦の歪みや破損、ルーフィング(防水シート)の劣化箇所があった場合は、早めに修理をしないと雨漏りや屋根が崩れる原因になってしまいます。
なお、高い位置にある屋根の細かい点検を、素人が行うのは危険です。
特に築年数が20年以上経った場合に屋根のトラブルは起こりやすいため、10~20年に1回のペースで屋根工事が得意な業者に点検してもらい、不具合があれば適切な補修をしてもらうことが、瓦屋根を長持ちさせるためには最も大切です。
洋瓦のメンテナンス方法とリフォーム価格・費用
洋瓦の屋根のリフォームで最も多い、棟瓦・漆喰の補修費用、および雪止めの後付けの工事の費用は、以下の通りです。
棟瓦の修理費用
棟瓦がずれたり外れたりした場合には、棟瓦の修理や取り直し(積み替え・積み直し)、および漆喰の修理・やり直しなどを行います。
基本的に、棟の両側に漆喰が施されているため、漆喰の補修費は棟の長さ×2(m)分、かかります。
棟瓦のリフォームにかかる費用の目安は、1mにつき8,500~19,000円程度です。
棟の段数が多いほど、費用が高額になる傾向があるほか、屋根の勾配が急の場合も、価格が高くなるケースがあります。
なお見積書の内容に、漆喰の補修費も含まれているのか別途発生するのか、チェックするようにしましょう。
漆喰のみの補修費用
屋根の漆喰のみを補修する場合の費用は、1mにつき約2,200~7,000円です。
総額5~7万円で済むこともありますが、足場の設置が必要になる高さの場合は、想像以上に高額になるので注意しましょう。
原則、漆喰の補修と同時に、棟瓦のメンテナンス・取り直しを行ったほうが効率的なパターンが多いので、リフォーム業者と相談して工事内容を決めると良いでしょう。
洋瓦に雪止めを後付けする場合の費用
既存の洋瓦の屋根に、後から雪止め金具を設置される方も多いので、こちらの費用についても触れておきましょう。
一般的な戸建ての屋根で、本体価格+施工費込みで7~40万円になるのが一般的です。
取り付ける規模によっては10万円以内で済むこともありますが、勾配が急などの理由で大掛かりな工事になる場合は20万円以上かかります。
また、足場代が別途かかる可能性もあるので、予算組みの際に考慮しておきましょう。
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セメント瓦・モニエル瓦の場合は塗装が必要
先述した通り、既存の洋瓦の屋根がセメント瓦・モニエル瓦である場合には、10~20年に一度は塗り替えも必要です。
一方、粘土タイプの洋瓦の場合は塗装が不要です。
一度塗装してしまうと、また定期的な塗り直しが必要になってしまうため、粘土瓦本来の40~50年以上の耐久力が失われてしまうことから、粘土瓦への塗装を依頼されても断る業者が多いほどです。
参考までに、セメント瓦・モニエル瓦を塗装する際の費用をご紹介します。
ウレタン系塗料 | 1,400~3,000円/㎡ |
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シリコン系塗料 | 1,700~3,500円/㎡ |
フッ素系塗料 | 2,800~4,500円/㎡ |
>> セメント瓦の屋根は塗装が必要?塗り替え・メンテナンスのタイミングを解説
>> モニエル瓦の寿命は何年?メンテナンスは塗装よりも葺き替えが推奨される理由
上記の他、足場代・高圧洗浄代・シーリング補修代などが別途かかる場合もあります。
一般的な戸建ての屋根50~80㎡の面積を塗装する場合、総額費用は25~60万円位になるパターンが多いです。
なおセメント瓦とモニエル瓦とでは、塗装方法が異なります。
塗装リフォームの際には、セメント瓦かモニエル瓦かを判断できる、瓦屋根の施工経験豊富な業者に任せましょう。
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【この記事のまとめ&ポイント!】
洋瓦(洋風瓦)の、主な種類は? |
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「F形瓦(平板)」「S形瓦」「混ぜ葺き仕様」などの種類があります(詳しくは、こちら)。 |
洋瓦で屋根を葺き替える際のリフォーム価格はいくら? |
一般的な戸建て住宅(屋根の施工面積:約80~120㎡)で葺き替える際の費用は、総額64~180万円位です。 ただし、新しく採用する瓦のグレードや、既存の屋根材の種類、屋根の勾配・形状などにより、価格が変動します。 また、足場代が別途かかる場合もあります。 |
洋瓦のメンテナンス周期や、リフォーム方法・費用は? |
メンテナンス周期の目安は、10〜20年です。 リフォーム方法としては「棟瓦・漆喰の修理や補修」などが一般的です。また「雪止めを後付けする工事」も人気があります(主なリフォーム方法と費用についての詳細は、こちら)。 なおセメント瓦・モニエル瓦の場合は、塗装によるメンテナンスが必要です(塗装費用などの詳細は、こちら)。 |
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