アスファルトシングルの屋根とは
「アスファルトシングル」は、今から100年以上前に北米で開発され、カナダや米国では普及している屋根材です。
アスファルトを、ガラス繊維(グラスファイバー)の基材に含浸・コーティングし、砂粒で表面を着色して作るのが主流で「シングル材」とも呼ばれます。
【アスファルトルーフィングとの違い】 「アスファルトシングル」は、名前が似ていることから「アスファルトルーフィング」と混同される場合があります。 「ルーフィング」は、屋根の下地に使われる防水シートのことなので、屋根材である「アスファルトシングル」とは別物です。 |
アスファルトシングルには、洗練された意匠性と優れた機能性があります。
防水紙を原料としており、とても柔らかく、ほかの屋根材で見られるような「サビ」や「ひび割れ(クラック)」といったトラブルがありません。
アスファルトシングル屋根のメリット
1.防水性に優れている
アスファルトシングルは、防水性の高い「アスファルト」と「ガラス繊維」を原料としています。
トタン・スレート・ガルバリウム鋼板といった屋根材では、ルーフィング(下葺き材・防水シート)を固定する際に、釘・ビス・タッカー(大きなホチキスのような物)を多く使います。
工事後に試験は行いますが、ルーフィングに無数の穴を開けて施工するため、雨漏りの危険性がやや高くなる場合があります。
一方、アスファルトシングルの屋根は、専用のセメント(専用接着剤)で張る工法が一般的であるため、極力ルーフィングに穴を開けずに施工できます。
2.防音性が高く雨音が気にならない
表面に施された天然石が緩衝材となるため、防音性が高い屋根材といえます。
金属屋根(トタンなど)のように「雨音が気になってしまう」といった不安が少ないです。
3.加工・施工しやすい
柔らかいシートであるため、カッターやハサミでも切れるほど加工が容易です。
曲面にも張れるほど施工しやすいので、複雑な形状の屋根でもリフォームしやすい傾向にあります。
4.軽量のため耐震性が高い
屋根に重さがあると、建物全体に負荷がかかることから耐震性に不安が残ります。
瓦などの屋根をリフォームする場合は、アスファルトシングルに葺き替えれば、耐震性を高めることができます。
屋根材の種類 | 重量 |
---|---|
アスファルトシングル | 約10kg/㎡ |
スレート | 約20kg/㎡ |
瓦 | 約45kg/㎡ |
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アスファルトシングル屋根のデメリット
1.勾配が緩い屋根には向かない
アスファルトシングルは、勾配がない(傾斜が緩やかな)屋根への施工は不向きです。
アスファルトシングルを施工できる屋根は、原則3.5寸以上です。
勾配が緩い屋根を軽量化したい場合は、ガルバリウム鋼板のほうがおすすめです。
ただし3.5寸未満の緩勾配に対応できる製品もあるので、リフォーム会社に確認してみるとよいでしょう。
2.表面の石の剥がれが気になる場合がある
天然石付きの製品が多いことから、劣化すると表面の石が剥がれ落ちてくるのが、シングル材の欠点です。
屋根のすぐ下に、おしゃれに見せたい庭やバルコニーがある場合、日々の手入れが大変かもしれません。
樋(とい)に石粒が詰まることもあるので、こまめに掃除する必要が出てくるでしょう。
3.カビやコケが発生しやすい
「屋根が北側にある」「湿気がこもりやすい場所」の場合は、カビやコケが発生しやすいため、シングル材は避けるほうがよいかもしれません。
カビ・コケは、軽度であれば高圧洗浄で解決できますが、その分のメンテナンス費用はかかります。
深刻な場合は、再発を防ぐために「塗装」「カバー工法(重ね葺き)」「葺き替え」のリフォームを行う場合があります。
4.強風に注意
先述のように、アスファルトシングルの屋根材は接着剤で施工するのが主流です。
屋根材自体が薄く柔らかいため、塗布や圧着作業が不十分な場合、風が吹くたびにパタパタとあおられたり、反る・破れるなど破損したりしてしまうことがあります。
なるべく台風や強風の後は「剥がれ」や「めくれ」がないかを確認することが大切です。
ご不安な場合は、プロの業者に点検してもらいましょう。
5.施工できる業者を探しにくい
以上のようなトラブルは、定期的なメンテナンスを実施することで、簡単な補修・修理で直しやすいです。
ただし国内であまり普及していないことから、取り扱いに慣れた会社が少ないです。
リフォームやメンテナンスをしたい際に、業者探しが大変になるかもしれません。
新しい屋根材にアスファルトシングルを採用する際には、「今後のアフターメンテナンスも対応してくれる業者かどうか」を確認しましょう。
6.防火地域・準防火地域では対応製品が限られる
防水紙を原料とした燃えやすい素材のため、「防火・準防火地域」の建物には施工できない製品があります。
防火・準防火地域でアスファルトシングルを採用したい場合は、耐火性の高い「屋根飛び火認定」された商品であれば使用可能です。
ご不安な場合は、施工業者に一緒に選んでもらうと安心です。
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アスファルトシングルのリフォーム費用・施工単価は?
アスファルトシングルの屋根にリフォームする場合の価格帯は、「ガルバリウム鋼板」や「スレート」の屋根と同じくらいです。
屋根材の種類 | 施工単価 |
---|---|
アスファルトシングル | 5,000〜7,000円/㎡ (高くなる場合:〜9,000円/㎡) |
ガルバリウム鋼板 | 5,000〜8,000円/㎡ (高くなる場合:〜9,000円/㎡) |
スレート | 4,000〜7,000円/㎡ |
瓦 | 5,500〜15,000円/㎡ |
アスファルトシングル屋根の耐用年数は20〜30年
2024年現在、アスファルトシングル屋根の寿命・耐用年数は20〜30年といわれています。
実際、アスファルトシングルの屋根が30年近く持っている建物も多く見られます。
(ただし立地・気候などの環境条件によっては、寿命が短くなる可能性があります。)
なお、下地となるルーフィング(防水シート)の耐用年数は、種類により異なりますが10〜30年程度です。
どの屋根材を採用しても、10〜30年に一度は屋根材を撤去してルーフィングを交換する必要があるため、その際に葺き替えやカバー工法を行うケースが多いです。
アスファルトシングルの屋根は10年に一度、点検を
アスファルトシングルは前述した通り、強風により剥がれなどの症状が発生する場合があります。
10年に一度くらいを目安に屋根業者に清掃・点検してもらい、葺き替えや補修が必要かどうか、判断してもらうとよいでしょう。
アスファルトシングルのメンテナンス・リフォーム方法は?塗装は必要?
アスファルトシングルの主なメンテナンスやリフォーム方法は次の4種類です。
めくれ・剥がれの補修
アスファルトシングルの一部がめくれたり剥がれたりしている場合には、接着剤やタッカーを使って、簡単に補修できます。
めくれ・剥がれ・破れなどを放置すると雨漏りの原因となってしまうため、気づいたら早めに業者に直してもらいましょう。
万が一、雨漏りが発生した場合は解決方法の判断が難しいため、雨漏り修理が得意な業者に調査しましょう。
塗装
スレートやガルバリウムといった屋根では、定期的に塗装でメンテナンスを行います。
屋根の表面に「塗膜」があることで、屋根材の防水性や耐久力を高められるからです。
一方、アスファルトシングルの場合は、必ずしも塗装が必要というわけではありません。
シングル材は屋根そのものの防水性能が高く、塗装したところで屋根の機能や耐久力を向上させられるわけではないのです。
そのためアスファルトシングルは「原則、塗装は不要」といわれています。
ただし次のような場合、アスファルトシングルの塗装を検討されることがあります。
① 屋根の表面が色褪せしている ② 表面の石粒が剥がれ落ちる |
これらのケースでは、屋根の「美観・仕上がりを保護する」「石粒を(塗膜で)保護・コーティングする」ことを目的として、塗装を実施します。
【アスファルトシングルの塗装には「水性塗料」を】
アスファルトシングルに塗装する場合、基本的に「水性塗料」を使用します。
油性(溶剤系)塗料を塗ってしまうと、アスファルトの成分が溶けて染み出る危険性があるためです。
>> 水性塗料と油性塗料の違い・メリット・デメリット
>> 外壁・屋根用塗料の特徴・価格の比較まとめ
知識のある業者に、適した塗料を選んでもらうのが無難でしょう。
【アスファルトシングルの塗装では「縁切り」も大切】
アスファルトシングルを塗装した際には「縁切り」という作業が必要です。
縁切りとは、屋根材が重なっている部分のスキマに入り込んだ塗料を、乾燥後に剥がすことです。
この縁切り作業を怠ってしまうと、屋根材の重ね部分のスキマに雨水が溜まってしまい、雨漏りの原因になってしまいます。
アスファルトシングルを塗装リフォームする場合には、縁切り作業もきちんと行ってくれるか、業者に聞いておくとよいでしょう。
カバー工法
表面のシングル材が傷んでいても、屋根の下地に問題がない場合には、上から新しい屋根材を重ねる「カバー工法(重ね葺き)」が可能です。
古い屋根材や下地材を撤去する必要がないため、工期や費用を抑えやすいというメリットがあります。
>> 屋根のカバー工法(重ね葺き)の費用相場・メリットとデメリット
なおアスファルトシングルは軽量であるため、既存のアスファルトシングルの上に新しい屋根材をかぶせても、耐震性の不安は生じにくいといえます。
葺き替え
アスファルトシングル材、および屋根の下地まで劣化している場合には「葺き替え」が必要です。
下地から剥がす作業や、既存の屋根材・下地材の撤去費用も必要になるため、コストや工期がかかりやすいです。
その分、ルーフィングも新しくなり、屋根全体の耐久力が向上します。
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アスファルトシングル屋根のカバー工法&葺き替えの事例・費用
最後に、当サービス『リショップナビ』の加盟業者が、アスファルトシングルの人気メーカー商品を使って、カバー工法や葺き替えのリフォームを行った事例をご紹介します。
事例1
『オークリッジスーパー』に葺き替え
築年数 | - |
---|---|
施工費用 | 80万円 |
工事期間 | - |
一戸建てのフルリフォームの際に、屋根を『オークリッジスーパー』にリフォームしました。
海外製品の中で、初めて「屋根飛び火認定」をクリアしたシングル材です。
事例2
傷んだ屋根にカバー工法で『リッジウェイ』を施工
築年数 | 30年 |
---|---|
施工費用 | 110万円 |
工事期間 | 13日 |
こちらの施工面積は65㎡です。
築30年で屋根材が傷んでいたため、既存の屋根の上から旭ファイバーグラス社の『リッジウェイ』を施工しました。
同製品も「屋根飛び火認定」を受けた安心のシングル材です。
事例3
瓦から軽量なアスファルトシングルに葺き替え
築年数 | 35年 |
---|---|
施工費用 | 180万円 |
工事期間 | 10日 |
瓦屋根がひどく劣化し、部分修理では直せない可能性があるほど、雨漏りしていました。
そこで、アスファルトシングルに葺き替えるリフォームを実施。
施工面積は約80㎡です。
悩んだら、屋根のリフォームが得意な業者と相談を
アスファルトシングルのメリット・デメリットを踏まえた上で、ほかの屋根材も検討したい場合には、屋根に詳しい業者と相談することをおすすめします。
シングル材と似た特徴がある、次の屋根材も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
屋根材の種類 | こんな方におすすめ |
---|---|
ガルバリウム鋼板 | ● 屋根を軽量化したい ● カバー工法(重ね葺き)を検討している ● メンテナンス周期が長い屋根がよい |
スレート | ● リフォーム費用を抑えたい ● シングル材とほぼ同じ耐久力の屋根がよい |
洋瓦 | ● 洋風のデザインにしたい ● 初期費用は高くても長持ちする屋根がよい |
できれば相見積もりで屋根業者を比較し、ご予算や今後のメンテナンスの悩みに合わせて、最適な提案をしてくれるところに頼むと確実です。
さまざまな屋根材がありますから、ぜひご自宅に最も合った物を選んでくださいね。
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【この記事のまとめ&ポイント!】
アスファルトシングル屋根のメリットは、何ですか? |
---|
「防水性に優れている」「軽量のため耐震性が高い」などのメリットがあります。 |
アスファルトシングルの、主なメンテナンス・リフォーム方法を教えてください。 |
「補修」「塗装」「カバー工法」「葺き替え」の4種類の方法があります。 ただしスレートやガルバリウム鋼板の屋根とは異なり「塗装」が向くケースは限られます(詳しくは、こちら)。 |
アスファルトシングル屋根の施工事例を見たいです。 |
旭ファイバーグラス社の『オークリッジスーパー』や『リッジウェイ』を施工した事例などをこちらに掲載しています。 |
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