多様な災害から家・生活を守るための「防災リフォーム」とは
近年、各種自然現象(地震・台風・豪雪・大雨・土砂崩壊など)による住宅被害が増加傾向となっています。
もともと住宅に関連した「防災」というと「地震(耐震)」のみに焦点があてられる傾向がありました。しかし、多彩な自然現象が存在する日本で、「地震」に特化してしまうのではなく、もっと様々な災害・トラブルへ視野を広げた「防災」を意識することが大切なポイントとなります。
リフォームというと、「見栄えを良くする」「住宅の機能性を回復する」「使いやすさの向上」が主目的となりますが、そこに「災害・トラブルに対する強さを付加する」ための防災リフォームを加えてみてはいかがでしょうか。
防災リフォームで対策する「7つの災害・トラブル要素」
防災リフォームの対象となる災害・トラブルには、7つの要素があります。
・地震災害
・火災
・停電トラブル
・ガス供給遮断
・強風災害
・給水遮断(断水)
・雷被害
※自然災害には、「大雨・洪水」も存在していますが、雨に対する対策(防水)は、住宅の主たる基本性能となりますので、防災リフォームの対象項目としては除外します。
自然災害・トラブルリスクは、「立地環境」「住宅構造」によって、大きな差があります。
そのため、上記7つの災害・トラブル要素の全てをリフォーム対象としなければいけないわけではありません。
ご自宅の状況に応じて必要と思われる対策を、防災リフォーム要素として、加えていただければと思います。
ここから、個別の災害・トラブルごとに、検討したほうがいい対策やリフォームをご紹介していきます。
地震災害対策:耐震リフォーム
昔から、防災リフォーム要素として、重要視されているのが「地震災害への対策(耐震リフォーム)」です。
住宅の耐震性能は、「耐震基準」に基づいて定められています。
耐震基準は、「1981年」と「2000年」に基準内容が大きく見直されています。「1981年以前の住宅」及び「1981年~2000年の住宅」と「2001年以降の住宅(現在)」とでは、耐震基準が異なっており、住宅の耐震性能にも大きな差が存在しています。
それゆえに、「2000年以前に建てられた住宅」においては、耐震性能を高めるための耐震リフォームが、必須の防災リフォーム項目として求められることとなります。
「耐震構造リフォーム」と「制震構造リフォーム」
現在、耐震リフォームには、地震対策(揺れへの対策)の仕組みが異なる「耐震構造リフォーム」と「制震構造リフォーム」の2種類があります。
「耐震構造リフォーム」というのは、地震の揺れに対して、建物全体の強度を高めることによって、住宅倒壊を防ぐという仕組みを強化するリフォームとなります。
対して、「制震構造リフォーム」は、主に「制震ダンパー」と呼ばれる装置を住宅に設置することにより、地震の揺れを吸収・緩和。家が揺れにくくなるようにする仕組みのリフォームとなります。
単純に「耐震構造リフォーム」と「制震構造リフォーム」の優劣を付けることはできませんが、特徴をひとつあげると「制震構造リフォーム」の方が家具などの住宅内部の造作物・備品類の損傷が軽減されるといったメリットがあげられます。
【耐震リフォーム要素1:耐震補強】
耐震リフォームの具体的要素をご紹介したいと思います。
一つ目の耐震リフォーム要素となるのが「耐震補強」です。耐震補強には、下記のような内容が含まれます。
●腐食など損傷が見られる柱・梁・土台・床組みなどの木材補強・交換。
●構造材(柱、梁、土台、基礎)を繋ぐ金物の付加・補強・交換。
●耐震性能を満たしていない基礎(無筋基礎など)の構造補強。
【耐震リフォーム要素2:耐震壁の追加・補強】
二つ目の耐震リフォーム要素が「耐震壁の追加・補強」です。
木造住宅(平屋・二階建て)の大半が「耐力壁計算(耐震壁の量及び配置バランス)」に基づいて作られています。ゆえに、「耐震壁の状態(強度など)・量・配置バランス」が現在の基準を満たしているかどうかが、とても重要なポイントとなります。
「耐震壁」は何度か強い揺れを繰り返し受けている内に、もともと有していた耐震強度が減少していく傾向があります。
そのため、どんなに丈夫に作られた住宅であったとしても、年月の経過に伴って、徐々に耐震壁の耐震強度は減少していくものなのです。
そんな耐震強度の劣化を補う目的で行われるのが「耐震壁の追加・補強」となります。
火災対策:防火性能の向上
住宅防火性能の向上を目的としたリフォームは、主に隣接家屋などからの延焼を防ぐことが対象となります。
外部からの延焼に対する防火性能を高めることは、同時に住宅内部火災に対しても、火災が外部・近隣へ広がることを抑制してくれることにも繋がります。
平成29年の建物火災件数は「21,218件」となっています。
建物の防火性能がアップしていることが、火災発生件数の減少傾向に寄与しているものと考えられています。
とはいえ、現在でも、「2万件以上/年」もの建物火災が発生しているわけですから、確率的にも最も注意すべき災害と言えます。
そういう意味でも、住宅の防火対策リフォームは、重要度の高い要素となっています。
屋根の防火性能
都市計画によって、「屋根の防火性能」が定められている地域があります。
そのような指定地域内では、もともと防火性能を有した屋根材が使用されているケースが大半なのですが、築年数の経過した建物や指定区域外の住宅の場合は、防火性能の低い屋根(屋根材、屋根構造)となっていることがあります。
そのような住宅にて、「屋根の防火性能向上」は、とても効果的なリフォームとなります。
外壁の防火性能
屋根と同様に、外壁に関しても地域(防火地域の指定)によって、外壁の防火性能基準に差が存在しています。
しかし、火災は、どんな地域においても起こり得る災害です。
防火地域の指定に関わらず、現在の外壁防火性能が低い場合には、高い防火性能を満たした外壁へのリフォームは検討しておきたいものです。
開口部(玄関・窓)の防火性能
外壁と共に火災の影響を受けやすいのが「開口部(玄関・窓)」です。
基本的に「玄関」は前面道路に面しているケースが多いため、主に防火上の課題となりやすいのが「窓」となります。
住宅リフォームを行う時には、窓の防火性能を検証。防火性能が劣っているようなら、窓の防火性能の向上をリフォーム要素に加えるように心がけていただければと思います。
軒下の防火性能
火災対策として、案外見落としやすいのが「軒下の防火性能」です。
屋根・外壁の防火性能はしっかり確保されているのにも関わらず、「軒下材」の防火性能が外壁などと比較して、性能が劣っているというケースも存在しています。
また以前、軒下材に関する耐火性能の偽装問題など(耐火建材を販売しているニチアスという会社が、2001年2月~2005年8月に認定された建材の耐火性能を偽って大臣認定を不正に取得していたという問題)もありました。
現在でも、必要な防火性能が満たされていない軒下となっている住宅が存在している可能性があります。
住宅リフォーム検討時にて、「軒下材の防火性能」の確認も忘れないようにしましょう。
停電トラブル(自然災害・人為的トラブル)の対策
2018年9月6日に発生した「北海道胆振東部地震」の影響で北海道全土に渡る大規模停電がありました。
その他にも、強風を伴う台風による塩害の影響にて、各地で停電が拡大するような出来事なども生じています。
自然災害だけでなく、人為的なトラブルによる停電被害も多くなってきています。
現代社会は様々な要素にIT技術・電子技術が導入されるようになったことで、停電に対する脆弱性が増しているものと感じています。
今後は益々「電気に対する依存度」が高い社会環境へとなっていくことが推測されます。同時にそれは、「停電リスクの拡大(停電の影響拡大)」を意味しています。
そのため、各家庭においても、「停電トラブル対策」の重要度は増していくものと考えています。
家庭用太陽光発電の導入
世界的な視点において、太陽光発電は急速に拡大しており、基幹的な発電システムとなってきています。
しかし、残念ながら日本においては、太陽光発電に関する基盤整備(国家施策、法規、送電網など)が遅れているのが実状です。
一時期、家庭用太陽光発電が促進された時期がありました。当時は売電収入を大きなメリットとして掲げる形で導入・促進された経緯があります。
ただ、近年「売電価格の削減」などが進められる状況となっており、売電を目的とした、家庭用太陽光発電の導入は減少していくものと感じています。
反面、本来太陽光発電が有しているメリットである、「停電対策」としての機能が見直されていくでしょう。
家庭用蓄電池システムの導入
近年、最も現実的な家庭用の停電対策として広まりつつあるのが「家庭用蓄電池システム」です。
開発当初は、家庭用設備として、かなり高額なシステムとなっていたことから、ほとんど普及しませんでしたが、開発が進む中、蓄電効率の改善や、価格低下が進んでいます。
現在では、住宅設備として、実用的&お手頃な価格の家庭用蓄電池システムが登場してきています。今後、実用的な停電対策として、普及していくものと考えています。
タンクレストイレのリフォーム
近年、家電・住宅設備の多くに「電子制御(IC)」が付加されるようになっています。
一見利便性が高まっているように感じますが、本質的な「利便性」はすでに十分満たされており、「電子制御の付加」の流れは、新たなリスクを同時に生み出していることを認識しておく必要があるものと思っています。
例えば、「トイレ」について、見た目がスッキリとしたデザイン性の良さから、近年、タンクの無い「タンクレストイレ」が普及しています。
ただ、一部のタンクレストイレは、停電すると通常使用ができなくなる商品があります。
近年では、停電時の対応が施された(乾電池での作動など)新しいタイプのタンクレストイレが普及し始めていますので、今後は、停電時に使用できないといったケースは無くなっていくものと感じています。
ただ、私は建築士として、「タンクありのトイレ」を提案するようにしています。やはり「貯水機能がある」ことは、災害時にて大きなメリットとなるからです。
ガス供給遮断の対策
地震災害時に、影響を受けやすいのが「ガス設備」です。
地中埋設されているガス管に損傷があると大きな二次被害が生じてしまいます。そのため、大きな地震が発生した時には、ガス管損傷の有無をすべてチェックした後に、ガス供給が再開されることとなるのです。
震度6弱以上の揺れが発生した場合は、ガス供給が遮断。経験上、供給再開されるまでの時間は、「一週間~二週間程度」が目安となります。(もっと長引くケースもあり。)
家庭用地中熱ヒートポンプシステムの導入
ガス供給遮断による主な影響が「温水」「暖房」への影響です。
ガス設備以外に、温水を作ることができる住宅設備として、注目されているのが地中熱を利用した「家庭用地中熱ヒートポンプシステム」です。
「地中熱ヒートポンプシステム」は再生可能エネルギーのひとつ。地中に存在している熱を冷媒の圧縮と膨張によって熱移動させるシステムです。
近年、家庭用に効率化された「家庭用地中熱ヒートポンプ温水暖房システム」などが寒冷地の一般住宅を中心として普及促進されてきています。
家庭用地中熱ヒートポンプ温水暖房システムは、地中熱をくみ上げて「暖房(床暖房・パルネコンベクターなど)」として利用でき、逆に、室内の熱(空気中の潜熱)を地中へ排出することによって、「冷房」として活用することができます。
※家庭用地中熱ヒートポンプ温水暖房システム:CORONAジオシス・シリーズなど
強風災害(台風・暴風・竜巻)の対策
日本は、強風災害(台風・暴風・竜巻)も多い地域となっています。住宅において、強風による被害を防ぐ上で下記3つの「強風災害対策」があげられます。
シャッター(電動シャッター)の導入
強風被害を生じやすい住宅部位のひとつが「窓(ガラス)」です。強風と共に、様々な飛来物が窓へダメージを与えます。
そんな飛来物による窓損傷を防ぐために最も効果的な手段となるのが「シャッター(電動シャッター)」の設置です。
近年の戸建て住宅(建売住宅)では、雨戸が設置されなくなった反面、シャッターが設置されるようになっています。
ただ、主に防犯上の意味合いが大きく、「一階のみにシャッター設置」となっているケースが大半。二階の窓には、雨戸もシャッターも無い住宅が多く存在しています。
台風などから家を守る上で二階の窓にもシャッターを設置することは、効果的な防災リフォーム要素となります。
窓に防災ガラス(耐震ガラス)の導入
窓ガラスが割れてしまった時、人への影響がないようにガラス破片が鋭利な状態とはならない「防災ガラス(防犯ガラス・耐震ガラス)」という商品が登場しています。
防災・防犯の両面から、リフォーム要素として検討してみてはいかがでしょうか。
軒の構造強度補強
強風による住宅への最も大きな被害が「屋根の大破」です。軒下から吹き上げる強い風によって、屋根が捲りあがり、吹き飛ばされてしまうことがあります。
台風などのニュースにて、度々そんな映像を目にすることがあるのではないでしょうか。
そんな屋根への被害を防ぐ上で、「軒の構造補強」が有効な対策となります。
軒の強度は軽視されやすい要素となっていますが、風が下から吹き上げるような立地環境となっている場合は、軒の補強をリフォーム要素として検討してみていただければと思います。
給水遮断(断水)の対策
給排水設備は、地震・大雨・洪水・噴火(降灰)によって、供給遮断となりやすい要素です。
「水」は飲料水以外にも、生活の中で沢山使用するもの。自然災害などによる給水遮断の対策は、とても重要度が高い要素となります。
生活用の水確保手段としては下記3つの方法があります。
水道配管内タンクの設置
最も手軽で効果的な対策となるのが「水道配管内タンクの設置」です。「飲料水」として使用できるのが大きな魅力となっています。
住宅の敷地空間や床下などに適切なゆとりがあることが設置条件となりますが、非常時の水確保に効果を発揮してくれます。
設備には、コンパクトな簡易タンクから、大容量(120L以上)の貯水タンク・貯水機能付き給水管などバリエーションがあります。(コストも大きな差があり。)
雨水タンクの設置
竪樋を通じて、雨水を貯水する「雨水タンク」があります。飲料水に使用することはできませんので、非常時のトイレ用の水としての利用が可能となります。
エコキュートの導入
エコキュートはガスではなく深夜電力を利用して、お湯を作る住宅設備。深夜の時間中に運転開始し、電気で貯湯タンクの中にお湯を貯めるタイプの給湯器です。
ゆえに、「貯湯タンクのお湯」が非常時に活用可能に。ただし、飲料水とはなりませんので、あくまでも、飲料以外の用途の水となります。
雷災害の対策
今後益々、住宅にて電子制御・インターネット技術が多く取り入れられるようになってくるとリスク拡大となるのが「雷災害」です。
停電だけでなく、落雷による直接的な被害(過電流)が増えていくものと予想されます。
この過電流によって、
●各種家電機器の破損
●パソコン・TVの破損
●家電機器損傷に伴う、火災発生
などの被害が生じることになるため、「雷被害を防止する分電盤の設置」など、住宅内の雷対策も重要視されてくるものと考えています。
住宅リフォームには、
●住宅の利便性の回復(見栄え、使いやすさ、住宅設備機能など)
●住宅&生活を守るための機能補強(防災、防犯、建物強度など)
上記2種類のリフォーム要素があることを知っておいていただければと思います。
その上でリフォームを検討する時には、どちらの要素が優先順位上位となるのかを見極めた上で、具体的な改修内容を絞り込んでいくことが効果的なリフォームに繋がります。
【リショップナビより】 今回は、一級建築士の方に、防災リフォームの種類と方法について解説いただきました。 近年増えている自然災害や火災・停電などのトラブルに対しても、適切な備えをしておくことで、被害を最小限に抑えたいですよね。 また、外壁や屋根の定期的なメンテナンスや修繕をしていない、劣化が進んだ状態では、台風や地震の被害が大きくなる可能性もあります。 さらに、災害後などは、リフォーム会社や工務店も、急に依頼が増えて人手が足りなくなることが多いため、「窓が割れている……」「屋根瓦がずれて雨漏りがしている……」という場合でも、すぐに直してもらえない可能性もあります。 そのため、災害が起きてからではなく、あらかじめ、防災リフォームの実施を検討しても良いかもしれません。 リショップナビでは、耐震・外壁・屋根・窓など、各種工事に対応できる全国の会社をご紹介しているので、ぜひご相談ください♪ |
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