出典:「介護保険における住宅改修」(厚生労働省)
上記を加工して作成
介護保険の住宅改修費支給とは
介護保険の住宅改修費支給とは、介護や支援が必要になってしまった方が生活しやすいように住宅改修する場合に、費用の一部を支援してくれる制度です。
日常生活の質の改善を目的とした、「床の段差を無くしたり手すりを設置したりする」住宅改修工事が対象です。
また介護保険の住宅改修には、家族が介護しやすい環境を整え、介護の負担を軽減する目的もあります。
この制度を利用するには、事前に申請する必要があるため、利用を検討されている方は「介護保険の住宅改修の流れ・申請方法」をご覧ください。
利用対象者
介護保険の住宅改修費支給は、次の2つの条件を満たす方が対象です。
● 要支援もしくは要介護の認定を受けている
● 自宅で生活している
要支援や要介護に認定されていても、介護施設で暮らしていたり、入院していたりなど、一時的であっても自宅以外の場所に住んでる場合には適用されません。
ただし、現在介護施設や病院にいても、今後自宅に戻ることが決まっていれば、対象になる場合もあります。
支給限度額
要支援・要介護の区分にかかわらず、支給限度額は「20万円」です。
ただし、自己負担額が「改修費用の1〜3割」に定められており、その割合は利用者の年齢や所得によって異なります。
たとえば20万円のリフォームを行なった場合、支給額は次の表のようになります。
自己負担割合 | 支給額 |
---|---|
1割 | 18万円 |
2割 | 16万円 |
3割 | 14万円 |
介護保険の住宅改修費支給は、原則1人1回ですが、上限を超えない範囲であれば数回に分けて利用可能です。
また、要介護区分が3段階以上あがったり、引っ越しをしたりした場合は、再度20万円まで利用できます。
介護保険の住宅改修対象になる工事内容
介護保険の住宅改修では具体的に何ができるか気になりますよね。
介護保険の住宅改修対象になる工事は、次の通りです。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 引き戸への取替え
- 床や通路の素材変更(滑り防止や移動の円滑化のため)
- 洋式便器への取替え
- 住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
各工事内容を詳しく解説します。
手すりの取り付け
廊下や階段、トイレ、浴室、玄関などでの転倒予防や移動・移乗のための手すりの取り付けは、介護保険の住宅改修対象です。
手すりの形状は、二段式・縦付け・横付けなどの指定がなく、使用者の状態に合わせて選べます。
動線の手すりであれば、屋外に設置した場合も対象内ですが、取り付け工事が不要な手すりの場合は住宅改修の対象外です。
段差の解消
床の段差や通路の段差を解消する住宅改修で、転倒防止や車椅子の移動をスムーズにする目的があります。
具体的には次の改修工事が対象になります。
● 玄関から廊下や各部屋の出入口の段差をなくす工事
● 敷居を低くする工事
● スロープを設置する工事
● 浴室の床のかさ上げする工事
昇降機やリフト、段差解消機などの設置工事は、自治体によって基準が異なるため、利用する前に確認しましょう。
引き戸への扉の取り替え
引き戸やアコーディオンカーテンへと取り替える工事も介護保険の対象です。
開き戸から引き戸やアコーディオンカーテンへ取り替えることで、移動や開閉時の負担を減らせます。
扉全体を取り替える以外にも、ドアノブの変更や戸車の設置も対象です。
また扉位置の変更より費用が抑えられる場合に限り、引き戸の新設でも認められます。
洋式便器への取り替え
和式トイレを洋式トイレに取り替えることも住宅改修の対象です。
取り替え以外にも、便器の位置や向きの変更も該当します。
ただし次の工事は対象外となるため、注意しましょう。
● 洋式便器を暖房便座や洗浄機能付き便座に変更する場合
● 水洗式便器または簡易水洗式便器に変更する場合
● 腰掛便座を設置する場合
床や通路の素材変更
床や通路の素材変更も介護保険の対象となり、滑り防止や移動をスムーズにする目的があります。
具体的に対象となる変更は次の通りです。
● 畳からフローリングやクッションフロアなどの床材への変更
● 階段の滑り止めの設置
● カーペットの取り付けや滑り止め加工
● 浴室の床材の変更
● 屋外通路面を滑りにくい素材へ変更
>> クッションフロアの特徴・張り替えリフォームの費用相場
>> マンションの床張り替え費用を種類別に解説!補助金や事例も紹介
工事に付帯して必要になる改修
ここまでにご紹介した5つの工事に付帯して必要になる工事の費用も支給対象です。
たとえば、手すりの取り付け部分の壁材の補強や、浴室の床のかさ上げで必要になる給排水設備の工事などが該当します。
ほかにも扉を設置するための壁や柱を補強する工事や、便器の取り換えで発生する床材の張り替えや給排水設備の工事なども対象です。
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介護保険の住宅改修の対象外になるケース
介護保険の住宅改修の対象外になるケースには、次のようなケースがあります。
● 動力を使った器具の設置
● 福祉用具の設置
昇降機や段差解消機では段差は変わらないため、段差解消が目的でないとされ対象から外されています。
またリフトや和式トイレ用の腰掛け便座などは福祉用具とされているため、改修工事の対象にはなりません。
対象外の場合、工事費用は全額負担になるため、しっかりと調べて住宅改修を検討しましょう。
ただ福祉用具には貸与の制度があるため、必要な場合は福祉用具の保険制度を活用するのがおすすめです。
介護保険の住宅改修の流れ・申請方法
介護保険の住宅改修の申請は以下の流れで進みます。
1. ケアマネージャーと相談
2. 住宅改修業者と打ち合わせ
3. 事前申請
4. 施工
5. 事後申請
各手順について詳しく解説するため、介護保険の利用を検討している方はぜひご覧ください。
1. ケアマネージャーと相談
まずはケアマネージャーと相談しながら、改修場所や内容を検討しましょう。
ケアマネージャーが必要な工事はどのような内容なのかを、詳しく教えてくれます。
改修場所や内容の決定後、ケアマネージャーが「住宅改修が必要な理由書」を作成します。
理由書は事前申請で必要なため、忘れないようにしましょう。
2. 住宅改修業者と打ち合わせ
業者と工事内容について打ち合わせをします。
介護を目的とした改修であることや、ケアマネージャーと相談した内容を伝えながら、適切な改修プランを作成してもらいましょう。
改修工事のプランを作成後、見積書を作ってもらいます。
見積書は自治体に提出するため、介護保険利用者宛で作成してもらいましょう。
3. 事前申請
住宅改修の見積もりまでできたら、事前申請を行います。
事前申請時に提出する書類は、自治体によって異なる場合があるため、しっかりと確認しましょう。
基本的に必要になる書類は次の通りです。
● 支給申請書
● 住宅改修が必要な理由書
● 工事費見積もり書
● 完成予定の状態がわかるもの
自治体によっては、工事前の改修箇所の写真や図面が必要な場合もあるため、申請する前に必ず自治体の担当部署で確認しましょう。
4. 施工
審査に通過後、申請内容にしたがって施工されます。
審査通過前の状態で施工してしまうと、介護保険の住宅改修の対象から外されてしまう恐れもあるためご注意ください。
審査に時間がかかる場合もあるため、完成の希望時期がある際は、できるだけ早めに申請の準備をし書類を提出しましょう。
5. 事後申請
工事完了後、支給申請を行います。
事後申請では、費用発生の事実がわかる書類などを提出し、申請が通ると介護保険から住宅改修費が支給されます。
事後申請で、必要になる主な書類は次の通りです。
● 住宅改修に関する領収書
● 工事費内訳書
● 住宅改修の完成後の状態を確認できる書類
● 住宅の所有者の承諾書
住宅改修の完成後の状態を確認できる書類には、改修箇所ごとに改修前後の写真を撮影日がわかる状態で提出しましょう。
自治体によって上記以外の書類等が必要な場合もあるため、事前に確認してください。
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介護保険を活用したリフォーム事例5選
介護保険を活用した住宅改修では何ができるのか、実際のリフォーム事例でご紹介します。
● 介護のためにバリアフリー化
● 介護保険を使った手すり工事
● 階段昇降機設置
● 介護用トイレ設置工事
● 段差解消&安全で暖かい浴室へ
各事例の概算費用や工事内容を詳しくご紹介するため、介護保険を利用した自宅改修を検討している方はぜひご覧ください。
介護のためにバリアフリー化
リフォーム費用 | 約20万円 |
---|---|
施工日数 | - |
住宅の種類 | 一戸建て |
築年数 | - |
手すりを取り付けた箇所は次の5箇所です。
● 浴室
● 洗面所
● 洗面所入り口
● トイレ
● 外階段に手すり
手すりの設置以外にも、トイレ入り口の段差を改修しバリアフリー化しています。
市役所へ提出する工事前後の写真や図面にも対応しました。
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介護保険を使った手すり工事
リフォーム費用 | 約25万円 |
---|---|
施工日数 | 3日間 |
住宅の種類 | 一戸建て |
築年数 | - |
下地にベニヤ板を入れてしっかり補強したため、体重を乗せてもびくともせずに安心して利用できます。
つかまる所が増えることで、移動も楽になります。
この事例では18万円の補助金を受け取れました。
>> この事例の詳細を見る
階段昇降機設置
リフォーム費用 | 約100万円 |
---|---|
施工日数 | - |
住宅の種類 | 一戸建て |
築年数 | 20年 |
階段昇降機を設置したことによって、階段の上り下りが楽になりました。
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介護用トイレ設置工事
リフォーム費用 | 約100万円 |
---|---|
施工日数 | 14日間 |
住宅の種類 | 一戸建て |
築年数 | 50年 |
本事例では間取り変更をして、物入れだったところをトイレに変更しています。
トイレの設置以外にも、介護保険を利用し次の箇所に手すりを10個設置しました。
● 新設トイレ
● 廊下
● キッチン
● 浴室
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段差解消&安全で暖かい浴室へ
リフォーム費用 | 約121万円 |
---|---|
施工日数 | 7日間 |
住宅の種類 | 一戸建て |
築年数 | 30年 |
出入り口の段差をなくし、転倒防止対策をしています。
浴槽を入りやすい高さに変更し、手すりを設けてお風呂場に出入りしやすいようにしました。
また、介護保険の対象外でしたが、冷たくならない床やお湯の冷めにくい保温浴槽などを取り入れて、冬の温度差を軽減しました。
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介護保険を活用して住宅改修をしよう
要介護や要支援認定を受けている方が暮らす住宅をリフォームする場合、介護保険を利用することで自己負担金を減らすことができます。
介護保険の住宅改修は事前に申請が必要なため、施工前に自治体で手続きをしましょう。
要介護者の症状によって必要な工事は異なります。
介護をされる方とする方が共に利用しやすい家づくりにはどのような工事が必要なのか、ケアマネージャーと相談しながら最適なプランを決めましょう。
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