工事箇所は"防水層"か"トップコート"のみか

ベランダ・バルコニーの床面は、下地の上に「防水層」を作り、その表面に「トップコート」を塗ることで構成されています。
ベランダの防水層の種類としては、FRPの被覆防水層を形成する「FRP防水」、液体ウレタンの塗膜で防水層を作る「ウレタン防水」が主流です。
また合成ゴムや塩化ビニール樹脂で作られた「防水シート」を貼る工法もあります。
この他に、アスファルトを合成繊維不織布に含ませて防水層を形成する「アスファルト防水」もありますが、こちらは屋上向けの工法なので、ベランダやバルコニーに使われることはほとんどありません。

なおベランダやバルコニーの床の表面には、主にグレー色の塗料が塗られているのを見かけることが多いと思います。
このグレーの塗装が「トップコート」です。
実はカラーバリエーションはたくさんあり、ベージュ・白・黒・ライトブルー・グリーンなども選べます。
トップコートには、防水層を紫外線から守る役割があり、主に「ポリエステル系」と「ウレタン系」の2種類があります。
トップコートが剥がれているだけか、防水層から直す必要があるかによって、ベランダやバルコニーのリフォーム内容が変わってくるのですが、それぞれ適切なメンテナンス周期が異なります。
防水層の耐用年数は10~15年前後
防水層は、10年前後で老朽化してきます。
素材によって、耐用年数は最長12~20年程度と幅はありますが、太陽の光などによって日々劣化していくため、ひび割れなどが発生する前に、10年に一度を目安にリフォームしておきましょう。
トップコートは5年に一度を目安に塗り替えを
一方、トップコートは5年程度の頻度で塗装が必要です。
保護塗料であるトップコートが劣化していると、防水層が熱や紫外線の影響で退化しやすくなります。
美観の復旧や遮熱対策にも繋がるので、トップコートの塗り替えはこまめに実施しましょう。
ベランダの防水は重要!こんな症状が出たら補修工事を
なお、築5~15年経過しているかどうかにかかわらず、ベランダやバルコニーの床で以下のような異常を発見したら、補修が必要です。

表面の色褪せ
床の表面が荒れている時・色褪せが見られる時は、トップコートの機能が低下してきています。
なるべく早めに塗り替え工事を依頼しましょう。
塗膜や防水層のひび割れ・剥がれ・ふくれ
ひび割れや、剥がれた箇所・ふくれた箇所を見つけた際には、表面のトップコートの塗膜だけか、防水層から劣化してしまっているのかを業者に確認してもらいましょう。
めくれた部分や浮き上がった部分がある場合には、トップコートや防水層だけではなく、下地の工事も必要になる可能性が高いです。
ベランダ・バルコニーに水がたまる
ベランダに水がたまるのは、排水口(ドレン)にゴミがたまっている/防水効果が切れてしまっている/雨水を自然に流すための勾配がそもそもなかった、といった原因が考えられます。
まずは排水口の掃除をご自身で行い、水が流れるか見てみましょう。
解決しない場合は、業者に現状をチェックしてもらってください。
状況に合わせて、排水口のひどい汚れや劣化がある場合は清掃をしてもらう/防水効果が切れている場合は防水層をリフォーム/勾配がない場合にはモルタルで勾配を作る、といった対応が必要です。
植物や藻の繁殖
ベランダ・バルコニーの床を割って、植物が芽を出している場合や、藻が発生している場合も要注意です。
特に雑草の根や茎は、非常に強く頑丈です。成長していく過程で、コンクリートを破壊してしまう恐れがあります。
放置してしまうと、防水層だけでなく、住宅自体を損壊させる危険性もあるため、早急にベランダのリフォームを行って除去しましょう。
雨漏り
ベランダの床の防水性が失われると、水が建物内部へ浸入し、建物を支えている大事な柱や梁、骨組みなどが錆びたり腐食させたりしてしまう危険性があります。
雨漏りは、ベランダ劣化の中で最も緊急性の高い状態です。
早急に業者に依頼し、雨漏りしている箇所をチェックしてもらいましょう。
>> 雨漏り修理工事の費用相場と業者の探し方!原因や今後の対策は?
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トップコートの塗料の種類と塗装費用
ベランダやバルコニーの床の表面に、ポリエステル系やウレタン系のトップコートを塗装する価格は、以下の通りです。
ちなみに、トップコートのみの施工は1日で完了します。
種類 | 単価(㎡) |
---|---|
ポリエステル系 | 1,550~3,000円/㎡ |
ウレタン系 | 1,700~3,000円/㎡ |
なお選ぶ塗料や、防水層がFRPかウレタンかによっても価格が変動します。
ゴムシートの上に塗装する場合は、「エマルション系」タイプの塗料を採用することも多く、こちらの場合はもう少し安価で済む可能性が高いです。

また実際には、上記の料金の他に、高圧洗浄費や人件費なども発生するため、10㎡以下のベランダやバルコニーで工事する際の総額は、2~5万円前後かかります。

「ポリエステル系」と「ウレタン系」のトップコートの違いについて、もう少し詳しく解説しておきましょう。
ポリエステル系の特徴と施工価格
ポリエステル系トップコートはたいていの場合、新築時に使われます。
硬い素材のため経年劣化すると割れやすいという欠点があり、重ね塗りにはあまり向かず、リフォームで採用される例は少ない傾向があります。
ポリエステル系トップコートを使用する場合の施工費用は、1㎡あたり約1,550~3,000円前後です。
ウレタン系の特徴と施工価格
リフォームの際に主に使用されるのは、ウレタン系トップコートです。
FRP・ウレタン・ゴムシート、いずれの防水層とも相性が良く、ポリエステル系のような硬さはありませんが、その分、伸縮性に優れているので割れてしまう可能性が少ないです。
ウレタン系トップコートでリフォームする際の費用は、1㎡あたり約1,700~3,000円です。
FRP・ウレタン・シート防水の価格や寿命を比較
ここからは、「防水層」の種類の違いについて比較してみましょう。
施工価格や耐用年数、10㎡以下の面積をリフォームする場合の工事期間の目安は、それぞれ以下の通りです。
種類 | 単価(㎡) | 耐用年数 | 工期 |
---|---|---|---|
FRP | 4,000~8,000円/㎡ | 10~12年 | 1~2日 |
ウレタン | 3,000~7,500円/㎡ | 10~14年 | 3~10日 |
塩ビシート | 3,500~7,500円/㎡ | 10~20年 | 1~4日 |
ゴムシート | 2,500~7,000円/㎡ | 10~15年 | 1~4日 |
なお、FRP・ウレタン・ゴムシート防水の工事費用には、トップコートの塗装代もセットで含まれています。
ただしいずれの工法であっても、高圧洗浄費や養生費、下地処理費、人件費などが別途かかります。
3~10㎡程度のベランダ・バルコニーをリフォームする場合、総額4~12万円になることが多いです。
最終的にかかる費用や工期については、必ずリフォーム会社に確認しておきましょう。
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以下から、各防水層の特徴の詳細をご紹介するので、確認していきましょう。
FRP防水の特徴と工事費用

FRPとは、「繊維強化プラスチックス(Fiber Reinforced Plastics)」の略称です。
プラスチック材料の中でも衝撃性に強く、耐水性や成形性が良いことから、ベランダ・バルコニーの床だけではなく、ボートや自動車のボディパーツ、浄化槽、バスタブ、太陽光発電や通信設備の基礎架台など、様々な成型品に利用されています。
FRP防水のメリット
FRP防水は以下のような特性があるため、新築住宅の多くのベランダ・バルコニーで採用されています。

【軽量のため建物にかかる負担が少ない】
FRPの重さは、3~5kg/㎡程度と非常に軽いです。
重量があると住宅全体にも負荷がかかってしまうため、軽量なFRPは、築年数が経った家や木造住宅の狭いベランダにも最適と言えます。
【強度がある】
軽量でありながら、重量に耐えられる強度があるのも、FRPの特徴です。
屋上駐車場の床にもよく使われています。
【耐摩耗性に優れている】
またFRPは摩耗にも強く、日々洗濯物を干すたびにベランダを歩き回っても、剥がれにくい性質を持っています。
競技場や工場の床などにも多く使用されているほどです。
【工期が短い】
塗膜の硬化速度が速いのも特長です。
何層も塗り重ねる工事であっても、悪天候でさえなければ1~2日で完了します。
FRP防水のデメリット
FRP防水はプラスチックが原料であるため、施工場所によっては要注意です。
【紫外線に弱い】
FRPは基本的にプラスチック素材なので、長期間の紫外線に弱く、劣化してひび割れてしまうことがあります。
そのため、5年に一度のトップコートの塗り替えを怠らないことが重要です。
【木造の広いベランダ・鉄の下地には不向き】
FRPは、伸縮性には優れていません。
木の収縮により、変形量が大きくなってしまう木造の広いベランダでは付いていけず、ひびなどが生じる危険性があります。
また、下地が鉄の場合は、FRP防水の施工はできません。
FRP防水の施工価格
FRP防水は、10~12年おきを目安にリフォームを行いましょう。
施工料金は、1㎡につき約4,000~8,000円です。
ウレタン防水の特徴と工事費用

ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗布する工法です。
材料が化学反応を起こして硬化すると、ゴム状で弾性のある一体性のある防水層ができ上がります。
狭小部や複雑な形状をした場所でも、継ぎ目のない完全な防水膜を形成できるのが特徴です。
また、下地に含まれている水分を脱気させることができるため、ふくれのトラブルが起きにくく、屋上やルーフバルコニーなどあらゆる場所に適しています。
ウレタン防水のメリット
ウレタン防水には、柔軟性や見た目の美しさなどのメリットがあります。
【色々な下地に対応できる】
ウレタン防水は下地がどんなものでもほとんど対応できるのが魅力です。
そのため既存の下地を活かすことができ、廃材も少なくて済みます。
【廃材が出にくい】
基本的に、既存の防水層の上に重ねて塗る工法であるため、廃材が出にくい分、手間やリフォーム費用を抑えやすいという魅力もあります。
ウレタン防水のデメリット
ウレタン防水は以下のようなデメリットがあるため、適切な時期にメンテナンスしてくれる業者を探しましょう。

【均一に塗装するのが難しい】
ウレタン防水はコテで塗っていくものですが、ムラなく均一に仕上げることが難しいため、塗装が得意な職人に頼む必要があります。
また、乾くまでに時間がかかるため、他の防水層よりも工期がかかりやすいです。
【経年劣化で亀裂する可能性がある】
ウレタン塗膜防水の塗膜が薄い部分は、紫外線や熱により早期劣化が生じやすく、地震や気温の変化による建物の伸縮から発生する下地の挙動に追従できずに、破れ・亀裂の原因となります。
寿命を迎えたら、早めにリフォームを実施しましょう。
ウレタン防水の施工価格
ウレタン防水は、10~14年程度の周期で工事が必要です。
施工費は、1㎡あたり約3,000~7,500円です。
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塩化ビニールシートの特徴と工事費用

塩化ビニール樹脂シート(塩ビ・塩化ビニルとも言います)を使う場合は、既存の防水材の上から施工することが可能です。
下地に直接貼り付ける「接着工法」、もしくは等間隔に置いた円盤やディスク板に熱溶着を行う「機械固定工法」で施工するのが一般的です。
塩化ビニールシートのメリット
塩化ビニールシートは、ベランダやバルコニーと非常に相性の良い素材で、以下のような利点があります。
【紫外線に強い】
塩化ビニールは、紫外線や熱に強いため、耐候性に優れており、強い日差しが当たるベランダやベルコに―に非常に適しています。
屋上やルーフバルコニーの床にも多く採用されています。
【耐摩耗性が高い】
また耐摩耗性もあり、洗濯物を干す際などの歩行にはもちろん、鳥がついばんでしまった場合でも穴が開きにくいという良さがあります。
【トップコート塗り替えが不要の場合が多い】
紫外線に強いことから、塩化ビニールシートの上にはトップコートを塗装しないで済むケースが多いです。
ただし、あえてトップコートを施工する事例もたくさんあるので、必要性についてリフォーム会社に確認してみると良いでしょう。
屋根がないルーフバルコニーなどの場合は、トップコートも塗布してもらったほうが良い可能性があります。
塩化ビニールシートのデメリット
塩化ビニールシートで施工したい場合は、以下の点に配慮しましょう。
【凹凸がある下地には対応できない】
シートである都合上、施工面が平らであることが条件となるため、室外機が障害となる場合や、ベランダ・バルコニーが複雑な形状である場合は、対応できないことがあります。
【接合部分の施工が難しい】
隣り合うシートをきれいに重ねる作業が難しいため、塩化ビニールシートの施工に慣れた業者に依頼しなくてはいけません。
万一、継ぎ目の処理を誤ると、防水効果を発揮できなくなります。
【寿命を迎えると割れやすくなる】
元々、塩化ビニールは硬い素材ですが、ベランダの床へ施工しやすいよう、可塑剤を加えて柔らかくしています。
この可塑剤の気化することによって、割れやすくなるため、寿命を迎える前にリフォームする必要があります。
塩化ビニールシートの施工価格
塩化ビニールシートを張り替える際の費用は、1㎡につき約3,500~7,500円です。
表面を保護・強化したい場合には、別途トップコートの塗装をしたほうが良いかどうか、リフォーム会社と相談してみましょう。
ゴムシートの特徴と工事費用

防水ゴムシートは、ゴムならではの伸縮性を活用して作られている建材です。
耐久力を持たせた合成ゴムで、「加硫ゴム系」「非加硫ゴム系」の2タイプがあります。
塩化ビニールシートと同様、「接着工法」か「機械固定工法」で施工されます。
軽量なので、木造住宅のベランダ・バルコニーにも向いています。
ゴムシートのメリット
ゴムシートは、素材の良さを活用した手軽さが魅力です。
【伸縮性があり下地に追従する】
伸縮性に優れており、地震の揺れや衝撃があっても下地に追従するため、ひび割れする心配が少ないです。
【温度変化に強い】
温度変化に強いため、どのような地域の気候にも対応します。
高温になっても、溶ける・変形する、といった不安がありません。
【低価格で施工可能】
FRP・ウレタン・塩化ビニールシート防水と比較すると、リフォーム費用が最も安価です。
ゴムシートが施工可能なベランダ・バルコニーであれば、コストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。
ゴムシートのデメリット
ゴムシートを施工したい場合は、以下のようなデメリットに注意しましょう。
【下地が平らである必要がある】
塩化ビニールシートと同じようにシート状であることから、床面に凹凸が多いベランダ・バルコニーに対しては施工できない場合があります。
【紫外線に弱いためメンテナンスは必須】
熱には強い面がある一方、紫外線による劣化は避けられません。
トップコートの保護効果が切れてしまう前に、しっかり塗り替えることが重要です。
【薄いので衝撃や鳥害に弱い】
ゴムシートは厚みがあまりないため、塩化ビニールシートよりも衝撃に弱いという欠点があります。
カラスなどが多いエリアでは、突っつかれてしまわないよう、壁沿いにネットを張るなどの対策が必要でしょう。
ゴムシートの施工価格
ゴムシートで施工する場合の費用は、1㎡につき約2,500~7,000円です。
環境や予算に合わせて、適したトップコートを塗布してもらいましょう。
ベランダの補修工事が高額になるケース
ベランダやバルコニーを歩いた時に、パタパタと音がしたら、早めにリフォームをしましょう。
長期間放っておくと、防水層のひび割れや雨漏りを引き起こします。
例えば、下地に合板を使用しているベランダでは、合板の接着材不良や、合板の張り合わせ部分の剥がれが原因で、防水層が浮いてしまっていることがあります。
防水層やトップコートだけではなく、下地から作り直さなくてはいけない状態の場合や、雨漏り箇所の修理が必要な際には、工事費用が高額になってしまいます。
3~10㎡前後のベランダ・バルコニーの場合、総額12~25万円を超えるパターンも珍しくありません。

5~15年の周期でベランダやバルコニーの防水対策をしておくことは、結果的に家全体を守ることにもつながります。
ベランダ・バルコニーのリフォームを検討したい際には、まずは防水工事が得意なリフォーム会社に相談してみましょう。
ご自宅の状況や予算に合わせて、最適な方法を提案してくれるはずですよ。
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【この記事のまとめ&ポイント!】
ベランダやバルコニーの防水工事は、どの箇所を、どのくらいの周期でメンテナンスすると良いですか? |
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ベランダ・バルコニーの床面は、下地の上の「防水層」と、その表面の「トップコート」で構成されています。 トップコートは約5年ごと、防水層は約10年ごとにリフォームすることを推奨します(詳しくは、こちら)。 |
ベランダやバルコニーの「トップコート」の、主な種類・特徴・塗装費用について知りたいです。 |
トップコートの塗料には、主として「ポリエステル系」「ウレタン系」の2タイプがあります。 それぞれの特徴や価格帯については、こちらで解説しています。 |
ベランダやバルコニーの「防水層」の、主な種類・特徴・工事費用について知りたいです。 |
防水層には、主に「FRP」「ウレタン」「塩化ビニールシート」「ゴムシート」などの種類があります。 それぞれの施工費用・耐用年数・工事期間の違いについては、こちらの比較表を参考にしてください。 |
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